よくある質問
よくある質問(FAQ)
刑事手続における押収、還付は?
刑事手続では、捜査等により押収等がされることがあります。
今回は、押収手続についての規定をまとめておきます。
被害品の押収のほか、性犯罪で、パソコンなどが対象とされることもあります。そのような場合の還付の相談もよく受けます。
押収物の還付・仮還付とは?
刑事訴訟法123条により、押収物で留置の必要がないものは、 被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならないとされています。
その手続として、押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができるとします。
さらに、押収物が電磁的記録を移転し、又は移転させた上差し押さえた記録媒体で留置の必要がないものである場合において、差押えを受けた者と当該記録媒体の所有者、所持者又は保管者とが異なるときは、被告事件の終結を待たないで、決定で、当該差押えを 受けた者に対し、当該記録媒体を交付し、又は当該電磁的記録の複写を許さなければならないとしています。
このような決定をするには、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならないこととされます。
刑事手続において、裁判所が押収した物は、被告事件が終結するまで効果が維持されます。
ただ、押収した物でも、そもそも最初から押収すべきではなかった場合や押収する必要がなかったという場合もあります。
そのような場合には、押収この効果を維持する必要がありません。そこで、裁判確定前でも返還を認めたものです。
「留置の必要のない」ものとは、没収すべき物として押収したものの、没収不可能だったり不適当だと判明した場合や、証拠物が事件と関連性がないことや証拠価値が乏しいことなどが判明した場合のことです。
留置の必要性と被押収者の不利益を比較して判断されます。
なお、仮還付は、押収の効力を消滅させず、再提出を求めることがありうるとしながら還付する方法です。
還付とは?
ここでいう「還付」 とは、物を元の所有者や本来受け取るべき者に返還することをいいます。
還付の決定により押収は効力を失います。
原則として被押収者に対して還付されます。
還付請求権だけではなく、裁判では、押収者(捜査機関)に原状回復義務があるとされています。
押収が誰によってされたのにかによって、法的には手続が変わってきます。
当初、捜査機関が押収した物であっても、刑事裁判の証拠として裁判所に提出されている場合はどうでしょうか。
裁判所で領置手続がされていると、裁判所の押収となります。
この場合、裁判所は、押収の処分を受けた者に対して還付しなければならないとされます。
これに対して、捜査機関の押収した物であっても、裁判所が押収していない場合には、還付決定ができないとされます。
還付できる時期
条文上、押収物を還付できる時期は、終局裁判の確定までです。
判決後、上訴前、確定前でも還付できます。
ただし、 上訴後、確定前という段階では、原裁判所に訴訟記録が残っていても原裁判所による還付はできないとされています。
被害者還付
財産犯での被害品を被害者に還付する規定が刑事訴訟法第124条です。
留置の必要がないものは、被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り、被告事件の終結を待たないで、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定でこれを被害者に還付しなければならないとしています。
民事訴訟の手続に従い、利害関係人がその権利を主張することを妨げないという規定もあり、別に所有権を主張する人がいる場合には、その主張をしていくことになります。
条文上の「贓物」は、財産犯により不法に領得された財物で、被害者が法律上追求できるものをいうとされています。
窃盗事件の盗品など、財産犯の被害品と考えれば良いでしょう。
「還付する理由が明らかなとき」は、被害者が返還請求権をもっていることが明らかなような場合です。
窃盗事件であればのように、 被害者 がその物の占有を回復すべきことが明らかな場合をいう。 恐喝、詐欺の被害者 が処分行為を取り消す旨の意思表示をしないときは、 還付すべき理由が明らか とはいえない。 被害者であるとして還付の請求がなされても、 権利関係が不明 瞭な場合は、 原則どおり、 被押収者に返還しなければならない。 本条によりなされた贓物の還付は、 実体上の権利関係を確定したり、 権利変 動を生ずる効力をもつものではない (本条2項)。還付後も自己の権利を主張す る者は、 民事手続により争うことができる。 (高倉新喜) (受命
不服申立て
裁判所の押収・押収物還付に関する決定に対する不服申立て手続としては、通常抗告となります。
被告人などの権利を保護するための救済手続とされます。
これに対して、検察官・検察事務官・司法警察職員のした押収・押収物還付に関する処分に不服のある者は、裁判所にその処分の取消し・変更を請求することができるとされています。準抗告です。
請求先は、その検察官等の所属検察庁に対応する裁判所、又は司法警察職員の勤務地を管轄する地方裁判所・簡易裁判所とされます。
押収の違法性がある場合は
最高裁昭和53年9月7日判決では「証拠物の押収等の手続に、憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである」とされています。
違法手続によって収集された証拠は、違法収集証拠と呼ばれ、証拠能力を排除されるのです。
覚せい剤事件に関しては、裁判例上、尿及びその鑑定書等について、違法収集証拠とされることも少なくありません。
被告人側のからの押収とは
押収は、通常、捜査機関や裁判所がしてくるものです。
ただ、逆に、被告人側から押収をするということも、法律は想定しています。
証拠物や証拠書類が滅失・散逸・段損・隠匿・改ざん等のおそれがある場合には、証拠保全として押収・捜索を求めることもできます。
さらに、証拠保全の関係では、対象物の滅失、段損、性状変更等のおそれがあり、かつ、押収や検証によっては証拠保全の目的を達することができない特別の事情がある場合には、鑑定が認められることとされています。
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