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よくある質問(FAQ)

 

不動産の名義貸しで公正証書原本不実記載罪になる?

 

戸籍や不動産登記簿など公的文書に間違った記載をさせた場合に、成立する公正証書原本不実記載罪。

では、間違った記載というのは、どういうものなのか、その真実性が争われた事件があります。

不動産名義が問題になった最高裁平成28年12月5日第一小法廷判決の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.29

事案の概要

暴力団員「暴力団の会合で使える会館を造ろう」

不動産仲介業者に対し、不動産探しを依頼。

しかし、県暴力団排除条例がありました。

そこで、暴力団員は、自分では不動産業者と取引できないと思い、被告人名義貸しを依頼。

土地や建物の名義人になってほしいとの依頼です。

被告人がこれを承諾。

土地の売買契約では、被告人が代表取締役を務める会社が名義人となり、被告人名義か会社名義で、本件各土地の登記を申請することに関係者間で決めました。

 


被告人は、売買契約の締結にも立ち会い、売買契約書も作成。

暴力団員から受け取ったお金で、売買代金全額を支払いました。

売主は、契約の相手方が、被告人の会社という認識。

この会社名義への所有権移転登記等がされました。

また、土地上に建築された建物は、所有者を被告人とする登記がされました。


このような名義貸しについて、被告人は、暴力団員や不動産業者と共謀の上、本件土地および建物について内容虚偽の登記申請等を行い、登記簿の磁気ディスクにその旨不実の記載をさせ、これを備え付けさせて行使したとして、電磁的公正証書原本不実記録罪および同供用罪で起訴。

 

原審までの判断

第1審では、建物登記についての電磁的公正証書原本不実記録罪および同供用罪の成立を認定。

しかし、本件土地の所有権は各売主から暴力団員に直接移転したのではなく、各売主から被告人の会社に、そこから暴力団員に順次移転したと認定し、本件売主らから会社への各所有権移転登記は不実の記録に当たらないとして、無罪としました。

当事者双方が控訴。

 

原審では、本件土地の所有権は、売買契約締結時に、被告人と暴力団員との間の名義貸しの合意によって売主から会社の名義を借りた暴力団員に直接移転したものと認定。そうすると、本件土地に係る登記は不実の登記ということができるとして、本件土地についても、電磁的公正証書原本不実記録罪および同供用罪の成立を認めました。

これに対し、弁護側が上告。

 

最高裁の判断

結論として、破棄自判、控訴棄却。

電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪の保護法益は、公正証書の原本として用いられる電磁的記録に対する公共的信用であると解されるところ、不動産に係る物権変動を公示することにより不動産取引の安全と円滑に資するという不動産登記制度の目的を踏まえると、上記各罪の成否に関し、不動産の権利に関する登記の申請が虚偽の申立てに当
たるか否か、また、当該登記が不実の記録に当たるか否かについては、登記実務上許容されている例外的な場合を除き、当該登記が当該不動産に係る民事実体法上の物権変動の過程を忠実に反映しているか否かという観点から判断すべきものであると、保護法益からの観点を重視しています。


そうすると、本件各登記の申請が虚偽の申立てに当たるか否か、また、本件各登記が不実の記録に当たるか否かを検討するにあたっては、本件各士地の所有権が本件売主らから、暴力団員に直接移転したのか、それとも会社に一旦移転したのかが問題となります、と争点を確認。


売買契約の当事者は、本件売主らと会社であり、本件各売買契約により本件各土地の所有権は、本件売主らから会社に移転したものと認めるのが相当としました。

そうすると、本件各登記は、当該不動産に係る民事実体法上の物権変動の過程を忠実に反映したものであるから、これ
に係る申請が虚偽の申立てであるとはいえず、また、当該登記が不実の記録であるともいえないことになります。

 

虚偽の登記になるかどうかは、売買契約の当事者が誰であるのか、暴力団員が買主と認定されるのか、によるところ、売買契約の当事者にはならず、買主としては名義貸しの会社であることから、虚偽の登記にはならないという結論です。

 

「不実の記録」とは?


公正証書原本不実記載罪における「虚偽の申立て」「不実の記載」の「虚偽」、 「不実」とは、重要な部分について客観的な真実に反することと定義されます。

電磁的記録への「不実の記録」も、同様に、電磁的記録内に重要部分について客観的な真実に反するデータを入力する
ことを意味するとされます。

 

名義貸しでの客観的な真実とは?

本件のように、名義貸しの不動産登記簿においては、客観的真実とは何なのでしょうか。

最高裁は、本罪の保護法益から導いています。

すなわち、保護法益としては、公正証書の原本として用いられる電磁的記録に対する公共的信用としています。

不動産登記簿に対する公共の信用が大事な視点となります。

本判決では、不動産登記簿の真実性を判断する基準として、不動産に係る民事実体法上の物権変動の過程を忠実に反映しているか否かとしています。

そうすると、民事実体法上の物権変動ではどうなのかということを確認する必要が出てきます。


物権変動という言葉を使っていることから、不動産登記制度においての真実性の基準は、誰に権利が帰属するかというより、その過程が重視されることになります。

高裁では、売主から暴力団員に直接所有権が移転するとしましたが、どのような理論構成なのか不明です。民事的には、売主から被告人会社に所有権が移転したと考えられることになるでしょう。

 

なお、自動車の名義貸し事件では、物権変動の過程として見れば正しいものの、現在の権利関係と違う人を所有者とする登録について、刑法157条1項に該当するとした裁判例もあります(東京地判平成4.3.23)。

 

中間省略登記は?

物権変動の過程が登記上反映されないものとして、中間省略登記があります。

順次、所有権の移転が行われるようなケースで、中間者を省略して、最初の売主から最後の買主に登記移転してしまう方法です。

登記費用の節約などの目的で、不動産登記法の改正前は使われていました。

これが犯罪になるかというと、今回の判決でも、「登記実務上許容されている例外的な場合を除き」とされており、実務上認められていた中間省略登記は、直ちには刑法157条1項には該当しないと考えられます。

 

 

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