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よくある質問(FAQ)

 

特殊詐欺の故意は?

特殊詐欺の故意が問題になった事例を紹介します。

闇バイトだの、仕事だのという名目で、特殊詐欺の一部を分担させられるケースは増えています。

このような場合に、詐欺罪の故意が認められるのか、争われるケースも多いです。

今回のケースは、荷物を受け取っただけという行為が問題になりました。

高等裁判所では無罪判決が出ていたものの、最高裁は有罪と認定しています。

特殊詐欺に関わる場合、故意は広く認められる可能性が高いです。

似たような最判が2つ続けて出ていますが、まず、最判平成30年12月11日を紹介します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.29

事案の概要

宅配便で現金を送付させる特殊詐欺事件。

各事件とも、被告人は、この荷物を名宛人になりすまして受け取った人物です。

これにより、詐欺罪で起訴されました。

荷物を受け取ったということで、被告人に詐欺罪の故意および共謀があるかが争点となりました。

1審はこれを認め有罪、二審は故意を否定し無罪としました。

 

一審無罪判決

まず、12月11日事件について見ていきます。

事実認定として、詐欺の内容は、氏名不詳者らにより、被害者(当時83歳)が、老人ホームの入居契約に名義を貸した問題を解決するために立替金を交付する必要があり、同立替金が後に返還されるなどと誤信。

被害者は、指定されたマンション住所へ現金150万円を入れた荷物を宅配便で発送。

被告人は、平成27年9月頃、かつての同僚であったGから、同人らが指示したマンションの空室に行き、そこに宅配便で届く荷物を部屋の住人を装って受け取り、別の指示した場所まで運ぶという「仕事」を依頼されたというものです。

被告人は、Gから、他に荷物を回収する者や警察がいないか見張りをする者がいること、報酬は1回10万円ないし15万円で、逮捕される可能性があることを説明され、受取場所や空室の鍵のある場所、配達時間等は受取りの前日に伝えられました。

被告人は、同年10月半ばから約20回、埼玉県、千葉県、神奈川県及び東京都内のマンションの空室に行き、マンションごとに異なる名宛人になりすまして荷物の箱を受け取ると、そのままかばんに入れ又は箱を開けて中の小さい箱を取り出して、指示された場所に置くか、毎回異なる回収役に手渡したというもの。

実際の報酬は1回1万円と交通費二、三千円でした。

 

一審は、このような仕事は、正常な経済取引ではなく、違法性を帯びた犯罪行為であることが容易に認識でき、被告人もそのことを認識していたなどとした上で、

被告人が、1か月の間に約20回という頻度で、異なるマンションの空室で、異なる名前を使い他人になりすまして荷物を受け取っていたこと、

詐欺グループによる他人になりすまして現金を詐取する犯罪が様々な形態で横行しており、ニュース等でも広く報道されていること、

被告人自身、詐取金の受取方には口座に振り込ませる方法や直接現金を取りに行く方法という複数の形態があること等を知っていたことを総合すると、被告人は、荷物を受け取ることによる犯罪行為の中に詐欺も含まれているかもしれないことを十分認識していたと推認でき、荷物の中身は詐取金でなく、違法薬物や拳銃であると認識していたという被告人の弁解に合理的根拠は見いだし難いとしました。

 

高裁判決の内容

高裁は、地裁のような推認をするには、報道等により社会的にどの程度空室利用送付型詐欺が周知されていたかにかかってくるところ、本件行為当時の報道状況に照らせば、通常人がその存在を当然に認識できたはずであるとはいえないとしました。

また、被告人が本件前に同様の形態の行為を約1か月間、繰り返し行っていた事実から、被告人は、自分が何を受け取っているのか疑問を抱くはずであり、疑問を抱けば調べるはずであるという第1審判決が前提にしていると思われる経験則についても、本件の被告人には荷物の中身を知ろうという動機付けが働かず、前記経験則が適用される場合とはいえないともしました。

さらに、被告人が認識していた詐取金の受取方法は、口座振込みによる方法と直接被害者から受取りに行く方法であり、マンションの空室で宅配便を受け取るという行為はこれらと比較すると相当に異質で、両者を結び付けるには相当高度の抽象能力と連想能力が必要であって、本件の宅配便の箱は外形上も現金送付のイメージと結び付きにくいともしています。

以上からすれば、第1審判決は、被告人が自らの加担する犯罪行為に詐欺を含むかもしれないとの認識を有していたとの点及び氏名不詳者らとの詐欺の共謀を認定した点について、その推認過程に飛躍があり、あるいは証拠の証明力や間接事実の推認力の評価を誤ったものであるから、論理則、経験則等に照らし不合理であって、これを是認することはできないとして、詐欺罪については無罪としたのです。

 

最高裁の判断

12月11日判決では、原判決を破棄、詐欺罪の故意および共謀が認められるとしました。

 

検察官の上告趣意は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらないとしつつ、職権をもって調査すると、原判決は刑訴法411条3号により破棄を免れないとしました。

 

被告人は、Gの指示を受けてマンションの空室に赴き、そこに配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に渡すなどしています。

加えて、被告人は、異なる場所で異なる名宛人になりすまして同様の受領行為を多数回繰り返し、1回につき約1万円の報酬等を受け取っており、被告人自身、犯罪行為に加担していると認識していたことを自認しています。

以上の事実は、荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり、本件の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無にかかわらず、それ自体から、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるものというべきであるとしました。

一審から言われていた報道での周知とは関係なく、怪しい行為であるとしたわけですね。

 

この点に関し、原判決は、上記と同様の形態の受領行為を繰り返していただけでは、受け取った荷物の中身が詐取金である可能性を認識していたと推認する根拠にはならず、この推認を成り立たせる前提として、空室利用送付型詐欺の横行が広く周知されていることが必要であるなどというが、その指摘が当を得ないことは上記のとおりであると一蹴。

また、原判決は、従来型の詐欺の手口を知っていたからといって、新しい詐欺の手口に気付けたはずとはいえないとした上、本件のように宅配便を利用して空室に送付させる詐欺の手口と、被告人が認識していた直接財物を受け取るなどの手口は異質であり、被告人にとって、相当高度な抽象能力と連想能力がないと自己の行為が詐欺に当たる可能性を想起できないとするが、上記両手口は、多数の者が役割分担する中で、他人になりすまして財物を受け取るという行為を担当する点で共通しているのであり、原判決のいうような能力がなければ詐欺の可能性を想起できないとするのは不合理であって是認できないとしました。

 

中身が違うと思っていたとの弁解は?

被告人は、荷物の中身が拳銃や薬物だと思っていた旨供述するが、荷物の中身が拳銃や薬物であることを確認したわけでもなく、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらないとして排斥しています。

被告人は、自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められるとしました。

 

最高裁平成30年12月14日第二小法廷判決

本判決の3日後である12月14日にも、詐欺罪の故意について判断されました。

こちらの事件では、被告人は、平成26年11月末から同年12月初め頃、知人の暴力団組員から、荷物を自宅で受け取ってバイク便に受け渡す仕事に誘われ、荷物1個につき5000円から1万円の報酬を払うと言われたものでした。

被告人は、犯罪に関わる仕事ではないか不安に思い、荷物の中身を尋ねると、雑誌とか書類とかそういう関係のもの、絶対大丈夫などと答えたとのことでした。


被告人は、私書箱業務契約書、五、六名分の運転免許証の写し及びプリペイド式携帯電話機を渡された上、仕事に関する連絡は本件携帯電話を使う、荷物が届く前に指示役の男が受取人の氏名を連絡するので、私書箱業務契約書の契約当事者欄に筆跡を変えて受取人と被告人の氏名等を記入する、荷物は絶対に開けない、荷物受領後に本件携帯電話で指示役に報告し、バイク便に荷物を渡したら連絡するなどの指示を受けて応じました。

このような事実だけでも、依頼された仕事が、詐欺等の犯罪に基づいて送付された荷物を受け取るものであることを十分に想起させるものであり、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるとしています。


被告人は、捜査段階から、荷物の中身について現金とは思わなかった、インゴット(金地金)、宝石類、他人名義の預金通帳、他人や架空名義で契約された携帯電話機等の可能性を考えたなどと供述するとともに、荷物の中身が詐欺の被害品である可能性を認識していたという趣旨の供述もしており、第1審及び原審で詐欺の公訴事実を認めています。

被告人の供述全体をみても、自白供述の信用性を疑わせる事情はない。それ以外に詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情も見当たらないとしました。


このような事実関係の下においては、被告人は自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められると結論づけました。

 

 

詐欺の故意が広く認められている


いずれの最高裁判決も、間接事実から故意や詐欺の共謀を推認しています。

このような推認には、受領の態様がおかしいものであったとしても、そこから予想される犯罪にはいろいろなものが含まれ、その認識だけでは詐欺罪の故意を推認できないのではないかとの批判もあります。

ただ、本件では、明らかに普通ではない行為をしており、その怪しさには気づくべきでしょう。

社会情勢としても、特殊詐欺の減少は課題であり、判決は妥当といえます。

 

 

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