インサイダー取引の課徴金、追徴金について解説。神奈川県厚木市の法律事務所が管理しています。

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よくある質問(FAQ)

 

インサイダー取引の課徴金、追徴金とは?

インサイダー取引という内部情報を知ったうえでの株式取引などをしてしまうと、色々と厳しい制裁があります。

課徴金、追徴金の制度、裁判例について解説します。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.27

 

インサイダー取引とは

インサイダー取引とは、会社の従業員や役員、大株主のような会社関係者や、情報受領者が会社の株価に関する重大な事実を知ったうえで、情報公開前に、株式の売買を行うことです。

内部情報を利用しての取引なので、不公正な取引となってしまうことから規制されています。

会社関係者には、役員だけでなく、パート、アルバイトなども含まれます。

会社関係者が退職しても、1年間はインサイダー取引の規制対象者となります。規制対象となるのはは会社に在籍していた際に、知った重要事実です。

会社関係者から、重要事実を伝えられた場合も、情報受領者として規制対象です。

規制対象になる行為は、売買なので、利益を得たかどうかは問われません

このような取引をしてしまうと、行政処分として課徴金、刑事処分として懲役刑、罰金、追徴金等、会社からも懲戒処分を受けるリスクがありますので、注意が必要です。

 

 

インサイダーの重要事実とは

インサイダー規制の対象になる情報である重要事実には、会社の決定事実があります。たとえば、会社の合併、事業譲渡などのほか、新製品開発などです。

また、上場廃止、主要株主の異動なども含まれますし、決算情報も該当します。

 

 

インサイダー取引の追徴金とは

インサイダー取引に対する規制としては、行政処分、刑事処分があります。

インサイダー取引の刑事罰としては、懲役・罰金刑とされますが、さらに追徴制度があります。

違反行為によって得た財産を没収・追徴する定めです。これが重いです。

この没収・追徴の対象は、インサイダー取引によって得た利益ではなく、得た財産そのものとされます。

そのため、売却益ではなく、売買金額となってしまうのです。売却であれば、売却代金から購入金額を引いたものが利益になります。

たとえば、購入金額が4000万円、売却金額が5000万円であれば、1000万円が利益となります。

刑事罰としての追徴金の場合、5000万円となるのが原則なのです。手元にはないお金まで準備しなければならないという厳しい制裁になります。

 

インサイダー取引の課徴金とは

追徴金は、刑事裁判の判決で決められます。

これに対し、行政処分としての課徴金制度もあります。

運転免許制度でも、刑事処分と行政処分は別々に取り締まられます。

行政罰としての課徴金と刑事処分での追徴金は併科することができるとされていますが、その分の調整規定があります。

 

インサイダー取引の調査

インサイダー取引は、まず証券取引等監視委員会や金融商品取引所等によって調査されます。

課徴金については、証券取引等監視委員会の調査及び勧告で審判手続が開始。

インサイダー取引とされる場合には、課徴金納付を命ずる決定が出されます。審判で「インサイダー取引をしていない」と内容を争ういう答弁書を提出した場合、審判期日が開かれます。そこで、審問がされます。証人尋問のようなイメージです。これらの内容から審判官が決定案を内閣総理大臣に提出。課徴金納付命令決定を出すか違反事実がない旨の決定が出される流れです。

審判手続は、金融庁サイドで行われ、刑事裁判のように証拠に対する不同意や開示請求も認められておらず、構造としては、刑事裁判よりも争いにくくなっています。少なくとも、自分の主張と異なる内容の調書に署名しないようにするなどの対応は刑事事件と同じです。

 

課徴金に対する不服申立

課徴金納付命令に不服がある場合、裁判所に対し不服の申立をする手続きとなります。

行政事件手続法は適用されません。行政手続で使われる審査請求もできず、効力発生日から30日の不変期間内に、課徴金納付命令の取消しの訴えを提起する方法となります。

 

インサイダー取引課徴金の時効

課徴金については、行為時から5年が除斥期間とされています。

時効のようなものです。

インサイダー取引等がされた日から5年を経過した場合は、課徴金納付に関する審判手続開始決定をすることができません。

 

刑事事件になる場合

証券取引等監視委員会の特別調査課による調査の結果、行政ではなく刑事罰が相当とされると、証券取引等監視委員会は告発を行うことが多いです。

これにより、検察官による捜査が開始することが多いです。逮捕・勾留、捜索差押え等の捜査がされる可能性が出てくるのです。捜査の結果、起訴された場合には、裁判所で刑事裁判が開かれ、有罪・無罪の判断や、どの程度の刑にするか、追徴金などが決められます。

金額が大きい追徴金の問題は、このような刑事裁判での問題です。

 

インサイダー取引追徴金の金額を争った事例

裁判例で、追徴金の額を争った事例もありますが、原則としては、上記のとおり売却代金全額とされています。

たとえば、大阪地方裁判所令和元年5月13日判決では、インサイダー取引で、追徴金の減額を否定しています。

被告人を懲役2年及び罰金200万円、懲役刑の執行猶予3年、売却代金6866万7500円を全額追徴としています。

 

事案の概要

インサイダー取引をしたとして罪に問われた事件です。

被告人は、知人から、上場しているE社の公開買付情報を聞きました。

知人は、職場の同僚から、ファイナンシャルアドバイザリー契約の締結に関し知った話として、顧客社による公開買付けを行うことについての決定を事実を、同社の従業員として知りました。職務に関し知ったと認定されています。

被告人は、この知人から、公開買付け実施に関する事実の伝達を受け、公表前である同年7月28日から同年8月3日までの間、被告人名義でE社の株券合計29万6000株を代金合計5326万8100円で買い付けたというものでした。

その後、合計6866万7500円で売りました。

 

追徴金が重すぎると主張

弁護人は、被告人は、信用取引等によって合計5326万8100円で買い付けた株式29万6000株を合計6866万7500円で売り付けたのであって、売却代金は売却益合計1539万9400円に比して相当高額と指摘。

売却代金全額を追徴額とするのは被告人にとって酷であるから、金融商品取引法198条の2第1項ただし書を適用して追徴額を売却益の範囲にとどめるべきであると主張

 

必要的没収・追徴を規定した金融商品取引法198条の2第1項本文、2項は、いずれも違法な証券取引によって取得した財産を残らずはく奪することによって、更なる違法行為への再投資を妨げて、不公正な取引を抑止し、健全な証券取引市場の確保を図る趣旨の規定であるとされています。

裁判所は、こうした法の趣旨に照らせば、インサイダー取引によって取得した不正財産は全て没収・追徴されるのが原則であると指摘。

 

追徴金が減額される例外とは

他方で、同法198条の2第1項ただし書は、取得の状況その他の事情から見て財産を没収・追徴することが被告人にとって過酷な結果をもたらすなどの例外的な場合があり得ることから、そうした場合に没収・追徴を例外的に減免することを許容するものと解されるとしました。


信用取引によって多額のインサイダー取引が行われた場合には、売却代金全額のうち実質的に行為者が手にできない部分が高額にのぼり、それをすべて没収・追徴することが過酷となる場合があり得るが、本件の売却代金や売却益等に照らすと、本件において売却代金全額を没収することが被告人にとって過酷な結果をもたらすような特段の事情があるとは認められず、本件が同法198条の2第1項ただし書を適用すべき場合に当たるとはいえないとしました。


したがって、没収すべき金額は売却代金合計6866万7500円となるが、すでに特定性を欠いて没収することができないため、その価額を追徴することとしています。


やはり、刑事手続、追徴金はかなり重い処分となっています。

 

 

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