少年事件で住居侵入で施設入所が取り消された裁判例。神奈川県厚木市の法律事務所が管理しています。

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よくある質問(FAQ)

 

少年事件で住居侵入で施設入所になる?

少年事件の住居侵入で施設入所との決定が重すぎるとされた裁判例があります。

広島高等裁判所令和元年8月28日決定です。

少年事件で重すぎる処分を受けたと感じる場合には、チェックしていると良いでしょう。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.29

事案の概要

少年事件で、住居侵入が問題になったケース。

ゲーム依存の状態にあった少年(当時14歳1か月)がいました。

家族に怒られずに長時間ゲームで遊ぶことのできる場所を確保しようと考え、外観上、空き家のように見えた被害者方居宅が実際に空き家であるか確認しようと侵入したという事件でした。

 

家庭裁判所の決定

家庭裁判所は、児童自立支援施設に送致という結論でした。

理由として、過去にも問題行動がある点を取り上げています。

少年は、小学4年生時に同級生宅に侵入し、ゲーム機等を盗んで児童通告を受けていました。

中学校進学後も、ゲームセンターに行くために他人の自転車を持ち去る行為を。

父親の叱責や勉強を避けるため家出をし、友人宅に侵入してゲーム等を盗むことも。

空き家と思しき家に侵入して寝泊まりする、などの触法行為を繰り返していました。

 

児童自立支援施設が妥当とした少年自身の問題点

少年自身の問題も指摘。

少年は、潜在的能力は高いが、その性格上、物事に取り組む意欲が持続しにくいとしています。

幼少期に母親と死別し、父親も単身赴任で遠方に居住する中、父方祖父母と同居し、慢性的な寂しさや、学業のことばかりいわれる不満からゲームに没頭したもので、その結果、学業に支障を生じるとともにゲームに関連した非行に及び、これについて家族からの叱責を避けるため家出をするなどする中で住居等への侵入を繰り返し、本件非行に至ったという経緯を重視しています。

さらに、ゲーム依存症の治療についても指摘。

これまで、少年は、父親の意向で中学1年時、ゲーム依存からの離脱のため約1か月間、心療クリニックに入院。

医師や父親と「ゲームセンターには行かない」、「宿題をする」などの約束をしたり、児童相談所に通い、児童福祉司の指導を受けたりするなどしてきていながら生活態度を改めず、高校受験に向けての学習塾に通う予定がありながらも本件非行を起こしているのであって、こうした家族や警察、児童福祉司の関与等が非行の歯止めとなっていないと認定。

このような点からすると、少年の問題点は未だ根深く、明確な枠組みを持った環境下で生活態度の改善を行う必要があるが、少年の非行性の程度に照らせば、少年院ではなく児童自立支援施設に送致し、家庭的な雰囲気の中で少年の特性に応じた専門的かつ一貫した教育を行い、社会的スキルを獲得させ、再非行の防止を図るのが相当であるとしました。

 

 

不服申立ての理由

家庭裁判所の判断に対し、少年が不服申立て。

少年の触法行為のうち、窃盗は古いもので、本件非行や直近の触法行為は、「空き家なら他人に迷惑をかけることもないだろう」などと考えて行われた住居等への侵入であり、その意図に照らし悪質なものではないと主張。

また、少年は本件で初めて逮捕、観護措置を経験し、初めて本件事案の悪質性を認識したもので、粗暴性や不良交遊等も認められないから、少年の非行性が高いということはできないと主張しました。

ゲーム依存についても、本件で観護措置等の身体拘束を受け、ゲームに触れない生活を一定期間、経験しており、ゲームへの依存から脱却して内省を深めていると主張。原決定においては、試験観察等の方法で今後の推移を見守るという判断も十分あり得たと主張しています。

 

高等裁判所の判断

原決定を取り消し、家庭裁判所に差し戻しました。

家庭裁判所の判断は厳しすぎるというものです。

 

少年の将来を重視

少年は、現在、中学3年生。

高校受験のための塾への入会を予定するなど、相応の真剣さをもって高校進学を希望しているところ、児童自立支援施設を含む収容処遇を受けると、来年度の高校進学は相当に困難となることがうかがわれるとしています。

少年の進学に向けての意欲や鑑別結果報告書に記載された少年の資質・能力を踏まえると、来年度の高校進学が困難となることは、少年の将来にとって、相当な不利益であることは否定できず、本件の処遇選択に当たっては、この点も十分に考慮する必要があるとしました。

高校留年となると、少年の人生には大きな影響があるのは確かでしょう。

 

住居侵入等の悪質性


本件非行事実の悪質性については、原決定中では、特に評価を示していないが、住居侵入事案であり、その目的は、家族の目の届かないところでのゲームの遊び場を確保したいというもので、「空き家なら他人に迷惑をかけることもないだろう」との安易で独善的な認識はそれ自体、当然問題視されるべきこととはいえ、このような動機自体は、同種事案の中において特に悪質なものとまではいえないとしています。

非行性の程度についても認定されています。

確かに、少年は、これまで、ゲーム関係品や現金の窃盗や、家出のための邸宅侵入等の触法事件を起こしてきており、ゲーム依存の度が強く、衝動性の高い性格傾向をも踏まえれば、ゲームに関連した再非行のおそれは否定しがたいと指摘。

しかし、その生活状況をみると、学校生活等において特段の問題行動も見当たらず、不良親和性も不良交友も認められないと指摘。

少年の非行性はゲームに関連した限局的なものにとどまり、深刻化しているとまではいい難いとしています。


この点に関連し、原決定は、これまで、家族や警察、児童福祉司による働きかけにもかかわらず、少年の非行に歯止めがかかっていないことを問題視している点を言及。

しかしながら、少年にとって家庭裁判所に送致されたのは本件が初めてであり、これまで、少年は、保護処分はもとより、家庭裁判所による教育的措置についても受けたことはないのであって、非行内容及び非行性等からすると、本件は、まずもって、社会内処遇による改善更生の方策が検討されるべき事案であったといえるとしています。

 

家裁決定後にも資料を提出

家庭裁判所の決定後にも、資料を提出し、有利な点を主張しています。

少年の事件当時の通学先の校長は、「少年は、欠席も少なく、落ち着いた学校生活を送っており、授業態度も良好である」などと述べている点の報告。

少年自身も、書面において「今回、初めて逮捕、観護措置等を経験し、罪の重さを痛感した。これまで、勉強や家族からの叱責など、嫌なことから逃げていたが、怒られる原因はすべて自分にあった。今は勉強の楽しさを知り、ゲームに代わる面白いことのように感じている。今後はゲームを断ち、勉強最優先にする。高校入試を目指して全力で努力する。」などと述べていました。

 

監督者の変化で処分結果が変わる

少年の実父は、原決定時、少年の児童自立支援施設送致を希望していたものの、原決定後、嘆願書を提出し、「原決定後、少年は、真摯な反省を見せている。今後は、父方祖父母と協力し、これまで至らなかった点を改善し、少年を全力でサポートするので、少年を、普通の学校に通い、友人らとともに高校に進学できる環境に戻してほしい。」などと述べています。

この父親の態度が原因だったような・・・

 

少年の祖父母においても、原決定時、「少年の監護に自信がない」などと述べていたものの、原決定後、嘆願書を提出し、少年の社会内処遇を強く希望。


在宅処分等が相当との判断

本件については、在宅試験観察の措置をとるなどして少年の社会内での生活状況を見た上で、特に問題がない限りは、基本的に社会内処遇を選択するのが相当であるというべきであるとしています。

なお、祖父母は高齢であり、その監護能力には限界があり得るが、仕事の関係で少年と離れて生活している実父においてもこれまで以上の協力を約束しているほか、保護観察処分となれば、補完的に保護観察所の適切な支援も期待されるところでもあると指摘。

そうすると、原決定は、社会内処遇の可能性を十分に調査・考慮することなく、収容処遇である児童自立支援施設送致を選択した点で、その処分は著しく不当であるといわざるを得ないとしました。

 

決定文だけを見ると、家庭裁判所段階で、もっといろいろとやっておけば良かったのでは?とも感じます。

しかし、実際には、家庭裁判所で施設入所という決定が出て、少年が事の重大さを真剣に考え、それを見て監督者の考えが変わった事件であるとも感じます。

 

依存が原因で、このような事件に発展することもありますので、しっかり対策もしておきましょう。

Q.依存症、悪習慣対策で有効な方法とは?

 

 

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